今昔狐物語

「魅力的」と思った。

けれど、彼女の思考は飛牙の言葉でかき消された。

「今宵はお前に相手をしてもらいたいな。可愛らしい夜の姫君」

艶やかな黒髪をかき上げながら近寄ってくる飛牙。

色気全開で迫ってくる彼が官能的過ぎて、蛍は顔を真っ赤にさせた。

「い、いえ!わっちは…」

振袖新造だから客はとらない、と言おうとした時。


(あ、れ?この人にも…)


「み、耳が――」


見えてしまった獣耳。

しかし驚きの声は途中で遮られた。

「しーっ、あまり大声で指摘しないでくれないか?」

飛牙が蛍の口を手で塞ぐ。

「んー!んー!」

「大声を出さないと約束できるなら解放してやろう。どうだ?できるか?」

蛍はちらりと飛牙を見上げ、少し心を落ち着けてから頷いた。


 
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