今昔狐物語
「いい子だな」
しっかりと約束させてから、飛牙が蛍の口から手を離す。
「あ、あの…」
耳と尻尾が気になる。
やはり自分の勘違いではなかったとわかり、蛍が怖ず怖ずと小声でその正体を尋ねようとした時だった。
それよりも早く、水真馳がニッコリ笑顔でこう言った。
「また会えて嬉しいですよ、蛍殿」
「え…ど、どうしてわっちの名前を…?」
「ふふ、私は記憶力が良いんです。特に…」
すいっと蛍の頬に彼の指が伸びた。
「可愛らしい女の子の名前はね、一度聞いたら忘れません」
とびきりの微笑みをたたえて優しく頬を撫でてくる。
(す、すごく口説き慣れしてる…!?)
不覚にも胸がドクンと高鳴った。