今昔狐物語

「いい子だな」

しっかりと約束させてから、飛牙が蛍の口から手を離す。


「あ、あの…」

耳と尻尾が気になる。

やはり自分の勘違いではなかったとわかり、蛍が怖ず怖ずと小声でその正体を尋ねようとした時だった。

それよりも早く、水真馳がニッコリ笑顔でこう言った。

「また会えて嬉しいですよ、蛍殿」

「え…ど、どうしてわっちの名前を…?」

「ふふ、私は記憶力が良いんです。特に…」


すいっと蛍の頬に彼の指が伸びた。


「可愛らしい女の子の名前はね、一度聞いたら忘れません」

とびきりの微笑みをたたえて優しく頬を撫でてくる。


(す、すごく口説き慣れしてる…!?)


不覚にも胸がドクンと高鳴った。


 
< 123 / 277 >

この作品をシェア

pagetop