今昔狐物語
鞠紗(マリサ)の暮らす村は町から遠く離れていた。
時代は江戸から明治に移り、少しずつ町では近代化が始まっているというのに、村全体を山に囲まれた彼女の故郷は、江戸時代で時が止まってしまったかのようだ。
「よいっしょ…!」
鞠紗は収穫したばかりのよく育ったタケノコをカゴに入れ、持ち上げた。
彼女の住む家の裏手には竹やぶが広がり、毎年多くのタケノコがとれる。
「昔はおじいちゃんと一緒だったよね。懐かしいなー」
小さい頃から祖父にくっついてタケノコ掘りを手伝っていた鞠紗。
大人になり祖父が亡くなった今でも、この伝統行事とも言える作業をやっている。
「そうだね。懐かしいよ」
鞠紗の隣で手伝っていた玖羅加も昔を思い出すように目を細めた。