今昔狐物語

玖羅加(クラカ)。

黒い長髪に、金色の瞳。

少し尖った耳に、鋭い爪。

笑うと口から牙が見える。

異形の青年――。


「玖羅加、いつもありがとね。後は大丈夫だから、もう戻った方がいいわ」

彼は妖狐と人間の間に生まれたハーフ。

ゆえに人間からは忌み嫌われ、狐からは馬鹿にされていた。

「ここにいたら、また村のみんなに気づかれちゃう」

昔、鞠紗の祖父が生きていた頃、玖羅加は村人に見つかって殺されそうになったことがある。

鞠紗の祖父が玖羅加のことを、「立派なお狐様の子孫だ」と言って庇ってくれなければ死んでいただろう。

信心深い祖父のように、鞠紗も玖羅加のことを悪くは思えなかった。

だから大人になった今もたまに会っては交流を深めている。


 
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