今昔狐物語

飛牙は村人達のそのような態度が赦せなかった。


小さな社において、自分が狩られそうになったことを思い出す。

一歩間違えれば、自分も喰われていたのだ。


憎い…。

憎い!!


憎いっ!!!!!!


「我ら狐に先に仇なしたのは人間ぞ!」



そうして飛牙は人を喰らった。


「仕返しのつもりだった…。我らの痛みを、苦しみを、恐怖を…わからせたかった」


わからせるために神聖なる狐が人間に下した罰。

しかし、いつの間にか飛牙は神聖ではなくなっていた。


彼は殺しすぎた。

喰らいすぎたのだ。


「俺は…社の神聖な黒狐から、凶悪な野狐へと自身を変えてしまった…」


血に塗れて、闇のどん底へと落ちた飛牙。


けれど、そのどん底に差し込んだ細い光があった。


それが、子狐を助けてやった少女、ちよだ。


 
< 26 / 277 >

この作品をシェア

pagetop