今昔狐物語
飛牙は村人達のそのような態度が赦せなかった。
小さな社において、自分が狩られそうになったことを思い出す。
一歩間違えれば、自分も喰われていたのだ。
憎い…。
憎い!!
憎いっ!!!!!!
「我ら狐に先に仇なしたのは人間ぞ!」
そうして飛牙は人を喰らった。
「仕返しのつもりだった…。我らの痛みを、苦しみを、恐怖を…わからせたかった」
わからせるために神聖なる狐が人間に下した罰。
しかし、いつの間にか飛牙は神聖ではなくなっていた。
彼は殺しすぎた。
喰らいすぎたのだ。
「俺は…社の神聖な黒狐から、凶悪な野狐へと自身を変えてしまった…」
血に塗れて、闇のどん底へと落ちた飛牙。
けれど、そのどん底に差し込んだ細い光があった。
それが、子狐を助けてやった少女、ちよだ。