今昔狐物語
「ちよ…ありがとう」
「飛牙?」
狐の姿でも彼の言葉が解せることに驚きつつも、ちよはむくりと起き上がる飛牙を不安げに見つめた。
「ありがとう…俺はお前のその言葉を待っていた」
飛牙とちよを囲むように突如、いくつもの狐火が現れた。
「あ…綺麗」
赤々と燃えるそれらに見惚れていると、いつの間にか飛牙が人間の姿に変化していた。
「ちよ、こう見えて俺は一途だ。死ぬまで俺に愛される覚悟はあるか?」
この問いに、ちよはしばし瞠目してから、邪気のない笑みを送った。
「死んでも愛して下さい」
予想外の答えに、今度は飛牙が驚く番だった。
けれど、さすがと言うべきか。
彼は直ぐに挑発的な微笑を浮かべた。
「ふっ…しかと心得た」
すると飛牙はいきなり、ちよを抱き上げた。