彼氏は11才!?
廊下の奥から現れた明らかに水商売風の女性。
まだ20代前半くらいだろうか。


「知子さん、この方はどなた?」

「清彦さんの愛人の千尋さんよ」

「島村千尋でーす」


クルックルに巻かれた髪をいじりながら千尋さんとやらの視線が母さんに注がれる。

何となくは気付いていたけど、やはり愛人か。

っていうか、香水の匂いがキツイんだけど。

鼻がもげそうだ。


「愛人は一人だけ?」

「いいえ。千尋さんも含めて5人居るわ」


母の問いに答えた知子さんが廊下の奥にある部屋に視線を流した。
どうやら全員、来ているらしい。

母を含む全員が遺産目当てか…。



「何か帰りてぇ…」

「私も…」



何とも言えない雰囲気に胃がキリキリしてきた庶民姉弟。


「母さん。私、やっぱり車の中で待ってるよ」


こんな屋敷より駅近くの駐車場に停めたボロ車の中の方が居心地が良いはずだ。今なら段ボールハウスの方が私に合ってる気がする。

「俺も姉ちゃんと車で待ってるよ。駅前にファミレスあったし」


ファミレスと聞いた途端にクルクリュリュ〜…と腹が切なげな音を奏でた。

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