約束の大空 2 【第三幕完結】※約束の大空・3に続く


「失礼します」


私たち二人がいる部屋に、
隊士の一人が声をかける。



「先ほど、近藤さんが京に入られたとのことです。
 今日にも、こちらへお戻りになられる予定です」




静かに隊士は告げて、
私たちの前から姿を消した。





近藤さんが帰ってくる。



思ってた以上に、
物事が早く動いてる気がする。



まだ先だって思ってた出来事が少しずつ目前に迫ってくる。


そして……花桜が悲しむ。





そんな花桜の悲しむ姿を想像するだけで、
そんな日が来なければいいのにって
思ってしまう。



大切な支えがいなくなってしまう悲しさ。
それは私が一番良く知ってる。



ただでさえ、花桜のことは私が沢山苦しめた。



だからこそ……幸せそうに過ごすこの時間を、
叶うならずっと続いてほしい……ずっとが無理なら、
せめて少しでも長く……。





「近藤さんが帰ってくるなら僕も準備しなきゃ。

 じゃ、瑠花。
 瑠花はこのことを、山南さんに連絡してくださいね。

 土方さんのところに行ってきます」



総司は手入れを終えた刀を手にゆっくりと部屋を出て行った。



私も総司とすごしていた部屋を後にして、
花桜が行き来している部屋へと向かう。




近藤さんが帰ってくることに総司は喜んでる。
だけどそれは……アイツが来ることになる。



もう時間がない。
動くなら、早く動かなきゃ。



このことを花桜に早く伝えるべき?


山南さんが切腹するあの日が近づいていると。



史実では、切腹とも自殺とも言われているけど
そのどちらもが、山南さんの命が途切れることを示している。



そんなことを考えながら、
私は山南さんの部屋らしき場所へと辿りついていた。




「山南さん、岩倉です」



障子の前に正座して奥の部屋へと声をかける。


中からごそごそと音がして、
スーっと障子が開かれた。
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