約束の大空 2 【第三幕完結】※約束の大空・3に続く

53.二人の絆 -瑠花-



花桜が山南さんを大切にしたいと思ってる気持ちが
傍にいれば居るほど痛いほどわかる。

総司の近くで何時、労咳を発症するかわからない恐怖を
押し殺しながら寄り添い続ける時間。

花桜が傍にいる時間はある意味それに近い。


『山南さん、花桜の為に今すぐ明里さんと出掛けてください。

 今日の夜にも近藤さんが帰ってくる。

 彼が帰ってきたら、山南さんの居場所がなくなる。
 未来の歴史はそうなってるんです』



花桜の為に逃げて欲しい。


心から歴史を変えて欲しいと願う時間。
そんな願いと希望を塗りこめて告げた私の言葉。


だけどそれは……山南さんには届かなかった。


ううん、私の気持ちを山南さんは受け止めたうえで
あの歴史通りに時間を動かそうとしてる。


そんな風に思えた。



鴨ちゃんの時と同じ匂いがする。




その覚悟がわかるからこそ、これから起こる出来事に、
花桜が立ち向かえるように今は少しでも長く、
彼の傍に居させてあげたい。


そんな風に思いながら時間を過ごしてる。


屯所内の家事も、花桜の負担を極力少なくする。


私には……親友の為に、それくらいの事しか出来ないから。


そしてそれと同時に思うのは総司の事。


総司自身が新選組の一員として、
実際にどんな仕事をしてるかなんて、
一番近くに居るのに私にはわからない。


私が知ってるのはドラマの中の沖田総司がして来た殺人の数々だけ。


ただ仕事をやりおえた総司は何も言わず、
私が居る部屋を訪ねて来て無言で抱きしめてくれるだけ。


そんな繊細な総司がこの次にやることになるのは、
山南さんの切腹の介助。



花桜の事も、総司の事も思えば思うほど胸が痛くなるばかりだった。





「瑠花、どうしよう」



そんなことを考えている私のところに、
泣きそうな顔をして、飛び込んできたのは花桜。



「花桜、どうしようって?
 山南さんのところにいったんじゃ」



そこまで言いかけて、
私はドラマのシーンを思い出した。
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