恋愛メンテナンス
「あんた人並みの人間って。私、人間じゃないみたいじゃんよぉ」

「魔女だろ魔女」

「魔女じゃない!あんたこそサタンの申し子でしょ!」

永田さんは、私の言葉に目が点。

でも実際ねぇ。

サタンの申し子だって思う時もあるし。

神様みたいにキラキラしてる時もある。

我が強いんじゃなくて。

本当に不思議な魅力のある人。

「魔女狩りしたるぅ~」

永田さんは全身で私をギュッと抱き締めた。

「ヒヤァ~♪」

「っうかさぁ、俺の事も今日から下の方で呼んでよ」

永田さんは照れ臭い顔して、少しだけ赤面して言った。

そんな表情を間近で見たら、こっちも照れ隠しで、スッとボケた事で誤魔化しちゃう。

「下の方?」

私は布団の中の、永田さんのナニを確認する。

「そうじゃなくてぇ」

慌てて隠して、私の頭をハタいた。

「ごめん。永田さんの下の名前、全然覚えてないや」

「クッ…ムカツクなぁ」

その顔その顔。

そのムッとした顔が、好きぃーっ!

本気なんだぁーって思う瞬間の表情だもの。

「俺、あきらって言うんだ。輝くって一文字で、あきらね」

輝く…。

「キラキラの輝くんか…」

「キラキラはどうでもいいけど。とりあえず、そうやって呼べ。俺の彼女の特権な。でも仕事中はもちろん…」

「副所長どの、でしょ?」

では、さっそく。

私は輝の上に乗って甘える。

「輝ぁ~、好きだよん」

「お、重い…」

夕飯は、昨日私が買ったそばを、年明けそばとして、2人で食べる。

今週末に、一緒に初詣に行く約束して。

カラオケにも行く約束して。

銭湯での話にもなって、

「風呂屋巡りも、寒いからいいかもなぁ」

って、自分の都合の悪い事は一切言わないんだから。

奥さんの事も。

子どもの事も。

早く過去の結婚生活なんて、忘れて欲しい。

私もあえて、その事には触れないで楽しく話していた。

「なるべく出掛けるなら、遠くがいい…」

だって、この辺りに居たら、そういう私にとって邪魔な者。

輝にとっての、無意味な者に出くわしたら嫌だもん。

呼び出されたら、どうせすぐ過去の家族の元へ行ってしまうんだもの。

「としこ…?どうした?」

「えっ?あっ、いやいや何でもない」

「としこってさぁ、時々そうやって、どっかに意識飛ぶよな?…俺、神経質なだけあって心配症な所もあるからさぁ。あんま不安にさせないでくれよ?」

肩をグッと掴んで、私を自分の胸の中に押し込める。

「隣りの騒音の時に、突然泣いたりさぁ。飲み会で意味分かんない持論を飛ばしたり。起伏が激しいから」

「やだなぁ、そんな深刻に考えないでよ」

他人の心配なんて、上辺だけでいいから。

更に深い所にあるものを他人が知った所で、どうにもならないんだから。

私の何ともならない考え方を、輝が知ったら…たぶん嫌われちゃう。

「アホなんだって私は。それだけだってぇ」

激しく笑ってやった。
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