恋愛メンテナンス
「うわぁぁぁん!!うぅっ…うぅ…うわぁぁぁん!!(号泣)」

下に聞こえるように大泣きしてやる。

壁にクッション投げまくったり、足でドタドタとわざと凄い音を立てて、怒りを表現してやったり。

ムカツクけど、輝、慰めに来てくれないかなぁ。

謝りに来て、抱き締めてくれたらいいのに。

いつものように、「アホだなぁ、おまえ」って頭を撫でてくれたらいいのに。

許さん!…けど、許しちゃうよ?

輝は知らんふりして、シャワーを浴びていた。

しばらくして、車の止まる音がした。

気になって、玄関からコソッと見る。

…最悪。

また、あの例の黒塗りの軽自動車。

うっとうしいなぁ。

どうやったって、あの車に輝は乗り込む訳でしょ?

分かってるから余計に、ムカツクのに更に見ちゃう。

輝は、身軽な格好して運転席に向かって、軽く手を上げる。

何よ!全然カッコよくない!

しっかり見えなかったけど、運転席はやっぱり女だった。

しかも、やたら大人しい雰囲気の地味な女で。

いかにも幸薄い、つまらない女。

全然、私と違うタイプ。

まぁ、あれなら幸せ欲しさに、結婚して子ども持っても、おかしくないわね。

…どこが、いいわけ…。

輝、あんた。

そういう女がいいなら、私なんかの恋人にならなきゃ良かったのに。

悪いけど私、あんな女みたいな薄っぺらい人生は求めてないからね。

人並みの人生だなんて、必要ない。

自分だけが、自分の望む通りの生き方をして満足するの。

あんたの彼女になったからって。

あんな女にして来たような態度、私にしたらすぐ別れるからね!

むしろ、同等の人種として扱われたくない!

全然、違いますからぁ!!

あんな薄っぺらい女が、いいだなんて…。

あんな魅力の有る人なのに…。

そして、あっさりと輝は、車に乗って行ってしまった。

泣き腫らした目には、また涙が滲む。

目を擦り過ぎて、涙がつたう度に痛くなる。

キューッて、心臓を握られたみたいに痛い。

仕事の上司として言ったんだよね?

彼女として、女として言ったんじゃないよね?

無能な女は、その程度で居たらいい。

そんな深い意味じゃないよね?

1人ぼっちの寂しさで、急激に被害妄想の網が広がった。

その後は被害妄想と嫉妬心みたいなので、頭の中がグチャグチャ。

離婚した女が図々しくも、あぁやってノコノコと会いに来てさぁ。

離婚した輝でさえも白々しく、鼻の下を今だに伸ばして会うんだから。

バカバカしい!

離婚して他人になったから、仲良く友達みたいに会ってる。

とでも、言い訳すんの?!

そして、このどうしようもないクズ2人から出来てしまった子どもも、私の中ではクズも同然。

クズだよ、クズ!




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