Dancing Night
両肘をぴんと張っておかなければならない社交ダンスと違って、ホールドの枠が小さい分、二人の距離が近い。
男性の右手はいつも、女性の肩甲骨の辺りにあるのだが、高妻の手は、香神の腰の辺りに添えられていて、香神は、何となく、落ち着かない気がした。
「こういうのは、慣れませんか?」
香神の気持ちを見抜いたように、高妻が涼しげに言う。
「いいえ、そんなことないです」
「ちゃんと習ったことはないので、ステップはデタラメですけど」
冗談めかして言った高妻は、早くも、音楽に合わせて、ステップを踏み始めている。