紅茶遊戯
今度は、って…。
やっぱりお前だったのかよ。

頭の片隅で少し冷静に突っ込む。


「勝手にしろ。今後一切彼女に近付くな」
「かっ!彼女!?キラガちゃんはお前の彼女なんかじゃないだろう!キラガちゃんはみんなのキラガちゃんなんだぞ!」


指差しながら腕を上下させる相手が意味不明なことを叫んでいる間に、まだ心臓がドキドキして鳴り止まない私の肩を強く抱いて小林は踵を返した。


「ばーか」


ついでに正直なご感想をもらして。

今のって、小林が言ったんだよね?
柄にもないような……

疑問を抱いて小林の顔を見上げた私は、次の瞬間、これまでにないほどの驚きで心臓が飛び上がった。


「なっ!なにおぉぅぅ!?」


突進して来たアイツの胸ぐらを、小林はいとも簡単に掴んだ。
片手で私の肩を抱き、もう片方の手で、だ。ふくよかなアイツを。


「おい、遠慮しねーぞ」


守られているはずのこちらまで恐縮するような冷たく低い声で吐き捨てた小林は、相手を突き放した。
反動で、相手は尻餅をつく。
小林が私の肩から手を放し、壁を作るように後ろ手に背後に立たせると、苦々しい表情の相手と一歩間合いを詰めた。


「なっ、なんだよ!覚えてろよ~!」


ちっとも迫力のない声で捨て台詞を残し、駆け足で逃げてゆく相手を見送ってから、小林は震える私の瞳を真っ直ぐに見た。


「大丈夫、歩こう。」


肩をぽん、と軽く押されて、私は一歩踏み出す。
途中、後ろを振り返ってみたが、アイツの姿はなかった。
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