紅茶遊戯
「紅茶、でいいかな?」
カップを目の高さに掲げると、テレビの前で所在なさげにつっ立っていた小林は、こくりと頷いた。
私はセイロンのティーパックを二つ、カウンターの上の紅茶コレクションの中から選んだ。苦味が少なくて、飲みやすい。一番無難だと思ったからだ。
開封したら、お茶っ葉の香りが鼻孔に届き、驚くくらい、その慣れ親しんだ香りに速やかに心は落ち着き、ポットのお湯をカップに注ぎながら私は無意識で深い溜め息を吐いていた。
嗅覚って、すごい。
もしかしたら人間の記憶に取り憑いて止まないのはおそらく、視覚や聴覚ではなく、匂いを嗅ぎ分ける力なのかもしれない、と思う。
芳ばしく広がる香りに浸り、やや恍惚としてしまった自分にハッとして小林を見ると、私に背を向け彼はテレビの前であぐらをかいている。
私は砂糖を注いでスプーンでかき混ぜると、二つのカップを持ち小林に近付いた。
「あ、どうもありがとうございます。」
カップを受け取った小林は、それを口元に近寄せながら、「寛永さんって紅茶、好きなんですね」立ち上る湯気に吐息を吹きかけた。
「ああ、うん…」
確かに好きだ。休憩時間もいつも飲んでる。
「美味しいです」
ただ傍につっ立って、見下ろしていた私に、小林は眼鏡越しに目を細めて柔らかく微笑んだ。
「……」
私の唇は、まるで小林の模倣みたく、カップに息を吹いた。
ただの紅茶なのに、あまりにも満足気な顔をするから、なんとなく。
気恥ずかしくなって、私はカップを両手で持って座った。
カップを目の高さに掲げると、テレビの前で所在なさげにつっ立っていた小林は、こくりと頷いた。
私はセイロンのティーパックを二つ、カウンターの上の紅茶コレクションの中から選んだ。苦味が少なくて、飲みやすい。一番無難だと思ったからだ。
開封したら、お茶っ葉の香りが鼻孔に届き、驚くくらい、その慣れ親しんだ香りに速やかに心は落ち着き、ポットのお湯をカップに注ぎながら私は無意識で深い溜め息を吐いていた。
嗅覚って、すごい。
もしかしたら人間の記憶に取り憑いて止まないのはおそらく、視覚や聴覚ではなく、匂いを嗅ぎ分ける力なのかもしれない、と思う。
芳ばしく広がる香りに浸り、やや恍惚としてしまった自分にハッとして小林を見ると、私に背を向け彼はテレビの前であぐらをかいている。
私は砂糖を注いでスプーンでかき混ぜると、二つのカップを持ち小林に近付いた。
「あ、どうもありがとうございます。」
カップを受け取った小林は、それを口元に近寄せながら、「寛永さんって紅茶、好きなんですね」立ち上る湯気に吐息を吹きかけた。
「ああ、うん…」
確かに好きだ。休憩時間もいつも飲んでる。
「美味しいです」
ただ傍につっ立って、見下ろしていた私に、小林は眼鏡越しに目を細めて柔らかく微笑んだ。
「……」
私の唇は、まるで小林の模倣みたく、カップに息を吹いた。
ただの紅茶なのに、あまりにも満足気な顔をするから、なんとなく。
気恥ずかしくなって、私はカップを両手で持って座った。