紅茶遊戯
「あ、」


小さく声を漏らしながら、小林はテレビの傍に放っておいたDVDのケースを手にする。



「今なに借りてるんですか?」
「ああ…、恋愛映画なの。昔の」
「へえ、俺観たことないや。面白いですか?」
「私もまだ観たことなくて」
「そうなんですか」
「実はDVDプレーヤーが壊れてて。観たいのは山々なんだけど」
「壊れてるのって、これ?」


テレビ台の下にある、DVDプレーヤーを目線で指し示した小林に、私は頷く。


「ちょっと見てみていいですか?」


カップを鷲掴み状態にして紅茶を一口飲み込み、テーブルに置いた小林はDVDのケースを膝に置き、DVDプレーヤーの前であぐらをかいた。
そして、「ドライバーあります?」と、私に言った。


「ある、けど…」


見てみる、って…。
直す、ってこと?

なにがなんだか釈然としない私はそれでもとにかく、カップをテーブルに置いて立つと、チェストの引き出しからあまり使われることがないドライバーのセットを取り出した。

それを差し出すと、小林はどこからともなく出てきたゴムで、少々長めの前髪を後ろで小さく束ねていた。


「ありがとう」


ドライバーセットを受け取って、にこりと笑う。


「…っ、」


不覚にも、心臓がどきりとした。

だってなんか、今までは前髪に隠されてよく見えなかった小林の素顔がはっきりと見える。
細過ぎない眉は形が綺麗で、おでこは割と広い。切れ長の二重瞼。眼鏡を支えるすっとした鼻筋。それに肌が、綺麗。もしかしたら、私よりも。
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