紅茶遊戯
「店員さんさぁ、キラガの主人公にさぁ、ちょっと似てるよね。うん、似てる似てる、似てるんだ、言われたことない?ねぇ」


元から多分細いのだと思われる目を一層糸みたいにして、相手は不愉快なくらい私の体を頭から足まで舐めるように見た。

私は眉をひそめる。
もう言っていいかな、客だけど、気持ち悪い。

目眩がする。
さっきまでいた休憩室が、誰の仕業かわかんないけど今季初のストーブ点火のお陰でやたら暑かったからか、頬が火照る。しかも臭かったし。


「君ならわかるだろ?君の口から教えてもらいたいんだよねぇ、せっかくだから。シッシッシッ」
「ーーお客様、」


背後からの鮮明な声に、私は驚いて肩を上げた。そしてちらりと振り向いてみて、もう一度盛大に驚いた。


「キラキラ☆ガールの変身シーンはどの回も一緒だと思います。それにそういうのが見たいなら、他の店に行ってください。うち、アダルトコーナー無いですから」


流暢に言い終えた小林は、しっかりと相手を見据える。さっきまで、私に小言を言われてちょっとへこんでたとは思えないくらい堂々と。
見るからに狼狽しだした客に厳しい目線を向けている。


「な、なななんだよお前っ、おお、お前にはき、聞いてねーんだよっ!」


そう吐き捨てて、客は急ぎ足で店から出て行った。

立ち尽くす私に心ばかり微笑んだ小林は、再びDVDを抱えて立ち去った。
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