紅茶遊戯
こういう、頼りない態度がまた緒方さんや店長の逆鱗に触れるのだけれど、大事そうに抱える大量のDVDを見て、私はなんだか緒方さんくらい正直に、怒ることなんて出来なかった。


「返却、大変だと思うけど頑張ってね。返却も大事な仕事だから」


小林がなにか言う前に、私はふらりと踵を返した。

まだ三カ月、別に返却に集中させててもいいじゃないか。
多分、仕事熱心なのはいいけれどなにかと敏感に反応する緒方さんと相性が悪いんだ。

そんな風に思ってしまう私は、指導係に向いてないのだろうか。


「あのぉ、すみませーん」


突然後ろから声がして、私は振り向いた。

そこにいた相手は、恰幅のいい中年の男性で、私を見るなり「あーやっぱり」だの「ふむふむ」だの、訳の分からないことを呟いた。


「なにか…」


ニヤニヤしながら、聞き返した私を見る。


「あのさぁ、キラキラ☆ガールの変身シーンが克明に描かれてるDVDってないかなあ」


のっそりとした口調で相手は言って、今度は私の全身を隈無く観察するような陰湿な目をこちらに向ける。


「キラキラ☆ガール、ですか…」


白状すると、頭の中は不審感でいっぱいだ。
けど客だし、蔑ろに出来ない訳で、私は取り敢えず「こちらです」アニメコーナーに案内しようとした。
すると


「場所はわかってんだよね。それより変身シーンが一番がっつり写っちゃってんのが知りたいだよねぇボクは。」


なにがそんなに可笑しいのか相手は、シッシッシッと口の中だけで笑った。
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