紅茶遊戯
私服だとなんだか、職場の中で見るときと雰囲気が違う。
いつも店長や私に怒られてるけど、こうして見ると普通の学生さんだ。


「ん?」


意外な私服姿についしげしげと見入っていた私は、小首を傾げた相手に見返され、ぱっと目を逸らした。


「あ、いや…。小林くんって、キラキラ☆ガール見たことあるの?」
「ないですよ」
「え、だって変身シーンがどうとか…」
「はったりです。寛永さん、困ってたみたいだから」


当然のように、なんの迷いもなく小林は言う。
私は風になびかされて邪魔な髪を耳に掛けた。


「じゃあ俺、こっちの方向なんで。また明日」


信号機の無い交差点まで来て、小林は私に深々と頭を下げた。


「あ、うん、また明日ね」


左に折れて歩いてゆく小林の背中を見送って、私もアパートに向かって歩き出した。
交差点から、徒歩数分。

アパートの部屋まで着いて、中に入るとまずストーブを点けた。
カーディガンは着たままで、食器棚からカップを取り出すとすぐ手が届くカウンターの上に並んでいた紅茶のティーパックたちの中から、ダージリンを選んだ。
開封するとカップに入れ、ポットのお湯を注ぐ。


「あー、寒」


次第に飴色に色付いてゆくカップを両手で持ち、一口飲み込んだ。
後に残る苦味が無くなった頃、通勤用のバッグの中から今日社割で借りたDVDを取り出す。

それを、プレーヤーにセットしようとして、思い出した。


「あ。壊れてんだった…」


そうだ。すっかり忘れてた。
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