紅茶遊戯
※ ※ ※

「それマジっすか?ヤバくないですか!?」


翌日、更衣室から店内に向かう途中。

緒方さんの金切り声が通路中に響いた。
円陣を組むように、休憩室の前にいたのは、ちょうど上がりの時間を迎えた早番のバイトの矢田さんと、交代で出勤した緒方さん、それに店長。


「どうかしたんですか?」


恐る恐る近寄ると、緒方さんは神妙な顔付きをしてみせた。


「今、お客様からクレームの電話があったそうなんです」
「へぇ、また?」


画像が乱れてるなどというクレームはしょっちゅうある。
だから差ほど驚きもしなかった私に、「違うんですよぉ!」緒方さんは両手をグーにして反論した。


「その内容が、あるバイト店員がもううちの店に来るな!って怒鳴ったっていうんです!」
「え?」
「しかもどうやら、そのバイト店員は小林さんらしくて」


私はすぐにぴんときた。
そのクレームの主は昨日のアイツだ。

でも。小林が、“怒鳴った”ーー?


「本部に連絡するからなって、電話に出た早番の子を脅したみたいなんです」


両手を力ませる緒方さんは、店長の方を向いた。
店長は腕組みをすると、うーん、と天井を見上げる。


「確かにこんな苦情が来たのも初めてだしなぁ」
「ち、ちょっと待って下さい。その苦情言ってきた客、私たぶんわかります」


話を切り出した私に、視線が集まる。


「その人、なんかいかがわしげなDVDを探してたみたいで。うちにはそういったものは置いてませんと対応したまでです」


なるべく落ち着いて言った私を、「寛永さんが言ったのかい?」店長は懐疑的な目で見た。
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