私は異世界の魔法使い?!


それは、突然訪れた静寂だった。


ーーああ。

このまま何もしなくても、いいんだ。

このままここで横になっていれば負けと判断されるんだね。

そうすれば終わるんだ。

何もかも。

この痛みや苦しみ、恐怖からも解放されるーー。


もう、いい。

それでいい。



そんな風に何もかもやけっぱちで、全てを放棄しようと思っていた時、どこからともなく声が聞こえた。


『ーー諦めるのか』


それは勝負していた男の声でもなく、この場外にいる審判達の声でもない。


『お前は諦めるのか……』


えっ……?


どこから聞こえてるのか。

不思議なのは、言葉の聞こえてくる感じが違うこと。

耳に届くのは男の声に、私の周りを吹く風の音。

そんなものとは別の場所から聞こえてくるこの声は一体どう言えばいいのか。

外的なところではなく、もっと骨に響くようなーー。


そう、言うならばこれは……脳から?



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