私は異世界の魔法使い?!
「……だから言ったのに。とうとう意識を失われてしまいましたか」
意識を失った……?
ううん、違う。
だってあの男の声も風の音も聞こえているから。
なのに、体が思うように動かない。
むしろ今までどうやって動かしていたんだったっけ?
瞼ですら重いし、この瞼はどうやって開けばいいの?
体の仕組みがわからない。
まるで自分のものではないみたい。
「こういう場合、どうすればいいのか?」
男は外野いる者たちに問いかける。
『ーー五分待て。それでも目覚めなければ再起不能とみなし、挑戦者の勝ちとする』
「五分……ね」
そう呟いた言葉が微かに聞こえた。
風が吹き荒れる中、そんな呟きが聞こえたのは辺りを包む風の勢いが穏やかになったから。
相変わらず体は動かない。
けれど、感覚はある。
緩まった風が優しく私を地面に降ろしている様子とか、闘技場の床も大理石で出来ているせいで堅く、冷たい感覚が傷の無い体をひんやりと冷やす。
逆にかまいたちによって傷つけられた傷は熱を持ったように熱い。
けれどもう身を切り裂かれる時に同時に聞こえる切れ味の良い音や、身が引き裂ける瞬間の嫌な音もしない。