私は異世界の魔法使い?!
◆
「さぁ、約束の五分だ! 審判よ、判定を!」
男が再び叫ぶ。
感極まった声で。
その瞬間、人差し指がピクリと揺れる。
それは動かしたというよりも、体の中の細胞が何かの電気信号を送ったように。
だが、男はそのことにも気づかない。
勝利を確信しているのだろう。
気づいているのなら、声をかけてくるはずだ。
しかしそんなことはなく、ただ、聞こえてくるのは笑い声。
その声を縫うように、場内に外野の声が響き渡る。
『……では、勝者を』
「……待って。まだ、終わってない」
ゆっくりと口を開き、喉が言葉を押し出した。
未だに体は重く、全身が悲鳴をあげている。
体は思うように動かないし、今までどうやって動かしていたのか……その感覚すら戻っていない。
けれど、私の中から沸き起こる、熱。
それは怒りの時に感じるようなもの。
けれど、そんな禍々しいものでも、狂気を孕んだものでも無く……頭がスッキリとクリアになり、それでいてほんのりハイなテンションで恐怖にも打ち勝とうとする、少しばかりのワクワクした気持ち。