私は異世界の魔法使い?!
これは私がずっと忘れていたもの。
私の中に眠っていた奮い立つ気持ちーー勇気。
それが私を突き動かす。
「あのまま、眠っていればよかったものを……そうすればこれ以上痛い目を見る事もないのですよ?」
「……馬鹿にするのもそこまでよ。ここからが本番なん、だから……」
ゆっくりとひとつひとつを確認するように、まずは指先。
その後手の平、そして腕……そうやって少しずつ順番に体を動かし、地面に伏せていた体を起こす。
「ははっ、そんなボロボロの体で何を言うのですか」
「うる、さい」
「私だってもう、ミア様に傷を負わせたくないのです。だから早く降参してくださいませんか?」
「うるさい、うるさ、い」
肘をついてやっと上体を起こし、男を見やる。
ほんの少し離れたところに男は立ち、私を見下ろしている。
金色の髪を手で払い、片手に大きな杖と、もう一方の手に私の杖を掴んだまま。
にやりと笑う姿すら、爽やかに見せながら。