私は異世界の魔法使い?!
あまりにも突然の出来事すぎて状況を理解出来ずにいる私。
ただ分かるのはカイトの温もりと心音、そして息づかい……。
それに気づいた時、私の顔は耳の先まで紅潮した。
ーードキン ドキン。
「お前、崖から飛び降りる気か」
耳元で囁くような声に、私の心が震えてもがく。
きっと、海斗と同じ声で同じ温もりを持ってる彼だから、私の体が勘違いして反応するんだ。
「がっ、崖……? そんなのどこに……」
カイトの体を押し返し、振り返ってもう一度歩き出そうとした……が、その足はピタリと止まった。
もう足を一歩踏み出せばそこは絶壁。
奈落の底かと思うほどに底は見えない深い深い谷があった。
思わず押し返したはずのカイトの体に、今度は私から飛び込んでしまった。
「ひぃぃぃ! 一体何で……っ、さっきまでこんなの無かったのに」
「だから言っただろう、ここは危険な場所だと。この迷宮の森は足を踏み入れようとする者、踏み入れた者を幻術にかけて迷わせる。
一度迷えば戻ってくるのも困難な場所なんだ」