私は異世界の魔法使い?!
カモタケツは再び翼を大きく空へと振り払う。
すると、それと同時に一本の黒い羽が私目掛けて飛んでくる。
真っすぐに、揺るぎなく。
それは私の左胸、心臓を狙っていた。
さっきまで呼吸を止められていたせいと、魔力の使い過ぎで心も体もぐったりと疲れていた。
もう虚ろに見えるそれを何も考えず、ただ目を瞑り、受け入れようとした。
けれどーー。
「ーー実亜」
私の体は温かいものにくるまれる。
また目に見えない何かに掴まれているのかと思ったけれど、今度は違った。
ゆっくりとこの世界に目を向けた。
「……カ、イト」
私はカイトの体温にくるまれていた。
……温かい。
そうだ、彼は温かいんだ。
人の事すぐ馬鹿にするし天の邪鬼。
短気だし、口を開けば嫌味ばっか。
遠い昔、人間は言語を使って自分の意志を伝える術を学んだ。
だから言語とは人類の進化の現れであるはずなのに、カイトに関して言えば進化した事が決してプラスに転じていない。
寧ろマイナスだ。
ずっとそう、思ってた。
でもねーー。