私は異世界の魔法使い?!



……本当はとても心が温かくて優しくて、いざという時にはすごく頼りになるヤツだって知ってる。


口は悪いけど、ズルはしない。

曲がった事もしない。

真っすぐな瞳でブレル事無く、迷い無く、私を助けに来てくれる。


……私が出会ったカイトという人物はそういうヤツ。



「……ぁぁ」



私は自由になった両腕でカイトの背中に手を回す。

両腕を掴んでいたサイは私の足元で倒れていた。

サイの巨漢には剣で切られた跡がある。

それはカイトの仕業だろう。

なら、私の喉を締め付けていたものから解放してくれたのもきっとカイトのおかげだ。


……だけどそんな事はもう、どうでも良かった。



「……ぁぁ、カイ、ト……」



さっきは私を抱きしめてたくせに、今やカイト腕はだらりと地面に向いていた。

体重を私に預け、動かない。

カイトの温もりが、背中に回した手にこびりついた。


ねとり、と気味の悪い感触と共に……。


赤く染まった軍服に、赤いマント。

その両方ともが濡れていた。

それが血だという事に気づくまで、そう時間はかからなかった。




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