私は異世界の魔法使い?!
だって今の私にあるものは、行動力だけだもん。
「riria、この世界であなたに会えて良かった」
「……本当にもう、何を言っても無駄みたいね……。実亜、知ってる? この世界には魔法は存在しないのよ」
「知ってるよ。ririaが教えてくれたじゃない」
あの瀕死の状態から傷一つ無く救ってくれた。
それは本当に魔法だと思ったから。
だからつい、そう聞いてしまった。
「そうだったわね。でもね、実亜……この世界は文明の利器が発達してるけれど、科学では証明出来ない奇跡が起きた時、私達はそれを魔法と呼ぶの」
鏡がガタガタと音を立てて揺れ始める。
ベース音も今では奇声に近い状態だ。
もう時間が無い、これ以上はもたない……そう教えてくれてるみたいに。
私はワンドの欠片をしっかりと握り締め、飛び込むのに勢いをつける為にしゃがんだ瞬間、ririaは再び声をかけた。
「実亜がいた世界でも魔法は存在しないみたいだけど、あなたはきっと、魔法使いだと思うの。……だから、実亜ならきっと大丈夫ね」
最後の言葉が耳に届いたと同時に、私が鏡の中に飛び込んだ。
だから最後は彼女が実際どんな表情でそれを言ったのか確認できなかった。
でもきっと、彼女は笑って見送ってくれたに違いない。
だってririaの声色は、確実に微笑みを携えていたから……。
私の体は闇の中に吸い込まれるように落ちてゆく。
その後、遠くの方でパリンっと何かが割れる音が聞こえた、気がした。
けれどその後は何の音も無く、景色も無く。
ただ、昏々とした闇が広がるばかりだったーー。