私は異世界の魔法使い?!
私も思わず頬が綻ぶ。
ふわりと空を漂うノアは内ポケットから懐中時計を取り出して、文字盤を覆うカバーを開けた。
「そうだね、色々話したい事も聞きたい事もあるけど、ひとまず行ってからにしよう」
ノアは私の手を掴み、目を閉じるよう促す。
だけど私は、ノアに言われる前にぎゅっと目を閉じていた。
瞼の裏が明るくなるほどの強い光を感じる。
光は今の私の心を、意志を、示しているようだ。
ソーサリーを追い出され、別の世界へ飛ばされた。
あそこへ戻れば私を快く思わない者達ばかりがいるってわかってる。
でも、それがわかってても、私はあの世界へ行くと決めた。
正直、また痛い思いをするのも、怖い思いをするのも嫌だし、したくない。
けど、逃げたら私は一生このままだ。
私は再び日常を取り戻せるのか、死なずにすむのかはもうわからない。
例え死なずにすんだとしても……後ろめたさと後悔だけを背負って生きるのなんて絶対嫌だから。
ノアの小さな手をぎゅっと握り、空いたもう一方の手でワンドの欠片を握り締めた。
そうして再び私は、あの世界へと移動したーー。