私は異世界の魔法使い?!
・魔法の国、再び
◆
「おねぇちゃん、着いたよ」
ノアの声に導かれるように、私はゆっくりと目を開けた。
そこに広がる世界は、私が初めてトリップした場所、青空市場だった。
けど、あの時とは少し違う。
同じ空、同じ町並みなのに、そこにはかつて見た活気が全く無い。
閑古鳥が鳴くような広場に違和感と胸騒ぎを覚える。
「……なんで誰もいないの?」
思わず呟いたら、手を離したノアが私のそばにふわりと浮かんで兎の耳をピクピクと動かす。
「以前にも増して次元の歪みを感じる」
それって……。
問いかけようとしたその時、誰かの悲痛な声が聞こえてきた。
「やめてよっ!」
閑散としている通りの中、それはそばにある小屋と小屋の間、細い路地からそれは聞こえた。
「誰か、いるの?」
言いながらそこを覗き込んだ瞬間、思わず叫ぶ。
「何やってんのよ!」
壁にもたれ掛かりながら男の子が頭部から血を流し、倒れている。
それを愉快そうに足蹴にしながら笑う、カモメのような姿をした鳥と、傷だらけの少年をただ傍観しているネズミに似た姿をした者。