私は異世界の魔法使い?!
「さぁ、行くぞ」
「あっ! やっぱりもうちょっと待って」
手を引くカイトを引き止めて、私は再び辺りを見渡す。
「ミア様の事だったら……」
「そうじゃない。そうじゃなくって……」
さっきの扉は、どこ?
鏡のように美しい扉。
鍵付きの扉。
私はあの中をどうしても覗いてみたいという衝動に駆られる。
鍵は無いと言ってたのに、さっきは開いていた。
その開いた扉の隙間から、ほんの少し溢れ出ていた木漏れ日を、私は見たんだ。
爽やかな風が隙間から抜けていた。
きっとあの扉の向こう側はとても美しい景色が広がってるに決まってる。
なのに、なぜか……それすらも悲しいと思える自分がいて、驚いた。
ただなんとなくそう思った。
私の知るカイトがあの扉の中にいると思ったのと同じように、なぜそう感じるのか分からないけれど。
でも、私はあの中身をなんとなく、肌で感じた。
だからこそ確かめたいと思った。
きっと、あれはーー。
「実亜……」
いつになく優しい声色。
「実亜、帰ろう」
そんな優しく言われると、これ以上引き止める事なんて出来ないじゃない。
視線をカイトに戻すと、そこには彼のほんの少し釣り上がった目尻が、優しそうに微笑んだ。
「さぁ……行こうか」
「……う、ん」
カイトに引かれるまま、私達はうごめく次元の中へと入っていった……。