私は異世界の魔法使い?!


「……実亜」

「んっ……」

「私……元の世界に帰るね……」


鼻をすすりながら、優しく私の体を引き離す。

そして向き合った先にいるのは、ショートカットの私。

目は真っ赤で、泣き過ぎて瞼は腫れてる。頬は涙の痕だらけ。


でもきっと、私も同じ顔をしてるんだろうな。


「……アーク、いる?」

「アークならここにいるよ」


そう言ってそばに現れたのは、兎の耳をつけた幼子のノア。


「ノア!」


「おねぇちゃんごめんね。大事なところでいつも僕、役に立たなくて……」

「そんな事より大丈夫なの!?」


カイトに蹴られて、アークにも何やらやられてたみたいだけど。

その時目が見えなくてどうなってるのか分からなかった。そのままカイトの意識の中へ入って、出てきた時にはノアもアークの姿も無かった。

もしかしてまた何かされてるんじゃないかって心配してたんだ。


「うん、僕は大丈夫。ほらこのとーり」


そう言ってノアは右手を掲げた。その手に掴まれているロープはノアの後方に繋がり、それを辿って行くと行き着く先にアークがいた。

目を回して伸びている。そんなアークの兎の耳にロープをギュッと巻いている。体や手足ではなく、耳のみを。



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