マリー
第十二章 真実
 知美の顔に影が伸びる。知美は人の気配と、まぶしい光にまぶたを叩かれ目を開ける。すると、しわのある男性が覗き込んでいた。彼が誰かはすぐに分かる。

「校長先生? どうして?」

 知美は今の事情が呑み込めず、今まで自分が何をしていたのか思い出そうとする。

 崖から身を投げた事を思いだし、辺りを見渡した。畳の部屋に布団が敷かれており、その奥には壺や掛け軸が飾られている。着ていた洋服も泥まみれのワンピースではなく、見た事のない白いシャツと短パンに変わっていた。

「枝に引っかかってたのを、通りかかった人が見つけてね。気が付いて良かったよ」

「マリーは?」

 そう急く様子で言葉をつむぐ。

「あの人形のことか。無事だよ」

 その時、ふすまが開き、長い髪の毛を一つに結った目鼻立ちのはっきりとした女性が立っていた。

「あ、気づいたんだ。良かった」

 女性は弾む言葉を口にし、知美の近くに来ると、額に触れた。

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