マリー

 知美は警戒心から体を震わせるが、彼女の反応は至って普通だ。

「大丈夫だと思うけど、医者に気になるなら見せたほうが良いかも。知り合いに聞いてみようか」

「白井さんに連絡を取ってからにするよ」

「それがいいかもね。お父さんから呼び出しがあって帰るけど、何かあったら呼んでね」

 だが、彼女は身動きせずに、知美の頭を撫でた。

「気分は悪くない?」

「大丈夫です」

「今度ゆっくりお話しようね。わたし、おいしいケーキ屋さん知っているんだ。おごってあげるよ」

 知美は思いがけない言葉に黙り込んだ。

 彼女は黙った知美に嫌そうな顔をせずに、ぽんと知美の頭を軽く叩いた。

 そして、またね、というと今度こそ立ち上がり、部屋を出て行った。

 岡崎と目が合い、知美は苦笑いを浮かべた。

 岡崎は困ったような笑みを浮かべている。

「わたしの姪で、人懐こい子なんだよ。あまり深くは気にしないでいいよ。ここには女物の洋服がないから、持って来てもらったんだ」
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