マリー
第十三章 幻
 青々と茂る緑に、水の流れる音が潤いをもたらす。

 知美は窓の外に繁る植物を、緑茶を片手に見とれていた。

「悪いね。セールスの電話だったよ」

 岡崎の言葉に我に返り、座布団のある場所に戻る。

「相変わらずすごいですね」

「わたしの数少ない趣味でね」

 彼は満足げに笑うと、腰を下ろす。

 知美はあれから白井家に戻る事になった。

 伊代は手紙を見てショックを受けていた。伊代は自分の謝罪の手紙を書き、知美の手紙をそのまま送ったほうがよいのではないかと提案した。

だが、知美は手紙を書き直しをし、再び友人に送る事になった。

 写真は誰がとは一言では言い表せないらしい。伊代自体はその現場を見ていないが、後々将に聞いた話によれば、美佐の部屋にあったものもあれば、宛先のない封筒に入れられ、家のポストに投函されていたものもあったそうだ。そして、捨てる事ができずに今に至る。

 優子は知美に何も言わずに完全に無視した態度を取っている。もしかすると岡崎か伊代から何か言われたかもしれないが、知美には知る術がない。

 近所の目は気になるが、今までとは変わらない生活を送っていた。

「白井さんは今日退院だよね」

「そうですね。お昼だから、まだ時間があると思います」
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