幻想
梨花の気分は徐々によくなっていった。たしかに思い込みというのは不思議なもので、暗い気持ちのまま生活すると、気分も沈み暗鬱な表情になる。それが気分のネジを締め直すと途端に、それが逆転する。
そう、気分が高揚し安定し自然体になる。
四号車は終着駅赤城のアナウンスの直後、慌ただしくなった。荷物を確認し、ペットボトルの荷物を飲み干し、あたりめを消化させようともがいている乗客たちが、忙しなそうにしていた。
ああ、そういえば絹絵はどうしているだろう。と梨花は思った。なんだか疲れた。その時だった。
「君、君は拳銃少女」
とサラリーマンにいそうな髪型の男が言った。どうやら今日という日は、人、となにかしらの接点があるらしい。年代を超えての。人と揉まれる時期に来ているのかもしれない。
「拳銃?」
梨花は訝しげに訊いた。
「僕は、みたんだ」
男は断定的に言った。
今日という日は、思い込みであり断定的な文言を放つ男が多い、と梨花は思った。
「梨花ちゃん、何度も説明してるんだけど。この人、頑固でさ」
いつの間にか化粧を施し、別人のように変化した絹枝がひょっこり背もたれから顔をのぞかせた。
「なら、もっと説明して納得させて」
と梨花は命令口調。
「目上に対して、その言葉はないんじゃないかなあ」
と男は憤慨やる方ない表情を見せた。
絹枝に対しては。それでいいのだ、と梨花は納得し自分に思い込ませている。
思い込み。
いけない。
「仕方ないよ。人は思い込みの中で生きてるんだから」
三号車で出会った不思議な男、たしか名前は恭一だっけ?が言っていた言葉を悪びれず拝借した。どうやら、その言葉は目の前のリクルートカットには効果的だったようだ。
「詩的な一文だ。高校生にしては、的を得ている」
「それはありがとう」と梨花は制服の内ポケットから水鉄砲を取り出した。「拳銃ってこれのこと?」
「やめろ、やめるんだ」
リクルートカットが両手で顔をガードしている。梨花が水鉄砲を発射しているのだ。さあ、その場所をどくのよ、その場所をどいて、と念じながら彼女は水鉄砲を発射させる。
梨花は絹枝を確認した。ニタニタと笑みを浮かべている。絹枝と目が合った。わたしにも水鉄砲が発射される、彼女はそう思ったに違いない。だが、梨花は発射しなかった。もう終点だ。それに、
「梨花!」
そう、気分が高揚し安定し自然体になる。
四号車は終着駅赤城のアナウンスの直後、慌ただしくなった。荷物を確認し、ペットボトルの荷物を飲み干し、あたりめを消化させようともがいている乗客たちが、忙しなそうにしていた。
ああ、そういえば絹絵はどうしているだろう。と梨花は思った。なんだか疲れた。その時だった。
「君、君は拳銃少女」
とサラリーマンにいそうな髪型の男が言った。どうやら今日という日は、人、となにかしらの接点があるらしい。年代を超えての。人と揉まれる時期に来ているのかもしれない。
「拳銃?」
梨花は訝しげに訊いた。
「僕は、みたんだ」
男は断定的に言った。
今日という日は、思い込みであり断定的な文言を放つ男が多い、と梨花は思った。
「梨花ちゃん、何度も説明してるんだけど。この人、頑固でさ」
いつの間にか化粧を施し、別人のように変化した絹枝がひょっこり背もたれから顔をのぞかせた。
「なら、もっと説明して納得させて」
と梨花は命令口調。
「目上に対して、その言葉はないんじゃないかなあ」
と男は憤慨やる方ない表情を見せた。
絹枝に対しては。それでいいのだ、と梨花は納得し自分に思い込ませている。
思い込み。
いけない。
「仕方ないよ。人は思い込みの中で生きてるんだから」
三号車で出会った不思議な男、たしか名前は恭一だっけ?が言っていた言葉を悪びれず拝借した。どうやら、その言葉は目の前のリクルートカットには効果的だったようだ。
「詩的な一文だ。高校生にしては、的を得ている」
「それはありがとう」と梨花は制服の内ポケットから水鉄砲を取り出した。「拳銃ってこれのこと?」
「やめろ、やめるんだ」
リクルートカットが両手で顔をガードしている。梨花が水鉄砲を発射しているのだ。さあ、その場所をどくのよ、その場所をどいて、と念じながら彼女は水鉄砲を発射させる。
梨花は絹枝を確認した。ニタニタと笑みを浮かべている。絹枝と目が合った。わたしにも水鉄砲が発射される、彼女はそう思ったに違いない。だが、梨花は発射しなかった。もう終点だ。それに、
「梨花!」