水底に囁く。
ぶくぶく。そんな音をたてて、突然、深海を漂っていた泡が、ぼくの周りに集まりだした。

ぶくぶく。ぶくぶく。

集まってきた泡はぼくをもみくちゃにして包み込む。手足などないふわふわとした綿毛のようなぼくは、なす術もなく泡に飲み込まれていく。

うごめく泡の中から、驚いたような人魚の顔が見えた。

ああほら、人魚さんが困ってるじゃないか。はやく泡をふり払って、大丈夫だよって、頭をなでてあげなくちゃ。

そう思ったとき、ぼくは気づけば手を伸ばしていた。

ないはずの腕を、たしかに人魚に向けて伸ばしていた。ぼくの腕が、人魚の絹の髪に触れていた。
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