先生の「特別」にしてくださいっ!
「凄い………宝塚みたいだね。」

兄貴の言うように、
女子校だから当然、男役も女子なので、
男の俺たちとしては不思議な感覚に陥る。

「でも、すげえ………
どっから出てんだ?あの声。」

ミュージカルは俺が思ってたより、
ずっと本格的で、
本当に中高生がやってるのか?
と思わせるものだった。

「………」

ふと、曲の時に兄貴をみると
必死で耳を澄ませていて、
曲が終わるとほっとした顔をする。

そっか…中野が伴奏だから…

「大丈夫じゃない?
音楽のこと、詳しくないけど、
ピアノ、普通に聞こえるよ?」

「そう…だけど、ね…」

ったく、心配性な兄貴だよ。
と思っていると、

「あ、凛さんだ。」

滝野が出てくる。

滝野扮するエポニーヌは
どうやらマリウスという青年に
恋をしているらしい。

しかし、そのエポニーヌの前で
マリウスとヒロイン・コゼットが
恋に堕ちてしまう。

エポニーヌの想いにマリウスは
気づかない…


滝野…

お前は…なんて切なそうな顔をするんだ。

それは演技だと、わかっていても、
そう、思わずにはいられなかった。
< 354 / 418 >

この作品をシェア

pagetop