LOVE GAME〜あたしの帰る場所〜
「私、子宮全摘の手術を受けたんです。彼がこどもが欲しいって言った直後に…」

 ただ、不妊症なのかと考えていた深空の頭に翠の言葉が容赦なく入ってくる。彼女は、目を見開き翠の顔を見ていた。

「子宮ガンだったの。摘出してしまわないと危険だって言われてね。やっと彼のためにしてあげられることが見つかったって思っていた矢先だった…」

 翠は目を閉じた。

「…あたしがこども産めないって解ったら、彼はまた元に戻ってしまった。それでも私を見捨てたりはしなかった。優しくしてくれる。気遣ってもくれる。でも、やっぱりいつも私よりもずっと遠くを見ていたの。あなたのことを想っていた…」

 深空は翠を直視することができず、唇を結んだ。

「あの日、あの人はあなたを探すために家を空けたの」

 彼女は、深空の目を強く見つめていた。

「…あなたにこどもがいるって解ったとき、正直ショックを受けたみたい。で
も、その子が自分の子だと解ると、急に愛おしくなって… あなたへの気持ちが、強くなった。でも、あなたに"現実"を突き付けられた彼は、あなたの元から去らなくてはならなかった…」

 すっかりぬるくなったコーヒーを、翠はすすった。

「……」

 その様子を深空は黙って見ていた。
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