LOVE GAME〜あたしの帰る場所〜
「でも、私は彼のことを愛しています。…あなたに彼を渡すつもりはありません」

 いつの間にか食べ終わっていた深雪が、深空の膝の上に座った。

「ママ、きょう、おふろどうするの?」

 無邪気な瞳で、彼女は深空に尋ねる。深空はそんな深雪を後ろから抱きしめて彼女に顔を近づけた。

「今日は深雪はお咳がゴホンゴホンしてたから、お風呂はやめよ? パジャマに着替えておいで」

 深空が言葉に、深雪は笑いながら大きくうなずくと、いたずらな笑みを浮かべて深空に抱き付いた。

「おっとっとっと… 深雪。今、このお姉さんと大事なお話してるからね。向こうのお部屋でお着替えしてきて」

 深空が優しく窘めると、深雪は立ち上がり隣の部屋の戸を開けた。

 彼女の小さな背中が見えなくなると、またさっきの静寂が戻る。

「一人で育てるのって大変でしょう? あなたの産む決心、すごいと思うわ」

 深雪の残像を見ながら、翠は目を輝かせながら言った。

(…まさか)

 深空の頭の中で、翠の深雪を見る目で深空は彼女の顔を凝視した。
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