婚約者から逃げ切るだけの簡単なお仕事です。




「えっ、け、敬太様!?」



お、俺の女!?俺の女ってなに!?まさか私のことじゃないだろうな!


動揺した私は、後ろから敬太様の腕をギュッと掴んだ。



「な、何をおっしゃっているのですか!

今の言い方ですと、敬太様が私の事を大切に思っているように聞こえますわよ!?」


「だったらなんだよ、なんか問題でもあるのか?」


「大アリですわ!」


お前がそれを言う相手は、目の前にいるヒロインこと真凛ちゃんなんだよ!


私みたいな悪役に言ってどうするんだ!!


恥ずかしさと怒り真っ赤になりながら、敬太様を睨みあげた。


しかし、文句を言ってやろうと口を開いたその時。



「あ、あの!」



一部始終をオロオロしながら見守っていた真凛ちゃんがそう声を上げた。


なんだろう?と思った私がそちらへ視線を向けると、



「彼氏さん、彼女さんに怪我させそうになっちゃって本当にすみませんでした!

そして末永くお幸せに!!」



妙に目をキラキラさせた真凛ちゃんは、そんな言葉と共に満面のスマイルを繰り出した。


桜の木の下で満面の笑みを浮かべる真凛ちゃんは本当に絵になるなぁ。


さすが『天シン』のヒロイン……じゃなくて。


え?


もしかして、真凛ちゃんの言う『彼女』って私のこと!?


っていうか、なんか物凄くヤバい勘違いをされてないかコレ!?




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