婚約者から逃げ切るだけの簡単なお仕事です。
――そもそもこの仕事は、毎年一年の委員長と副委員長が行っているという
いわば慣習のようなものだ。
別のクラスの委員長ペアも身を粉にして働いている中、自分だけワガママを言うわけにはいかないしねー。
そんな私たちの様子を確認した先生は、ひとつ頷き返すと
『じゃあもう少し見回りをしてくる』
とだけ言って人混みの中へ入っていった。
その背中が完全に消えるまで見送った私は、菅原様の方へ向き直るとにっこりと微笑む。
「さて、それでは私たちもパーティーを堪能しましょうか!」
「……そうだな、俺も少し喉が渇いたし」
「では貴方がエスコートしてくださいね、パートナーさんっ」
「……善処する」
少し悪戯っぽく笑えば、菅原様もほんの少しだが表情を緩めた。
そのまま、連れ立って近くのテーブルへと移動する。