婚約者から逃げ切るだけの簡単なお仕事です。




――この仕事について聞かされたのは、私と敬太様が部屋で妙に食い違った話をしていた時の事だった。



『……七宝院、すまない。午後からの立食パーティーの件で少し重要な話がある』



そう言って私の部屋を訪れた菅原様は、

何故か不満げな表情をしている敬太様をサックリと無視して業務連絡をしてくれた。


内容は以下の通り。



1、立食パーティーでは毎年生徒同士の衝突が発生しやすいこと

2、そのため、性別に関係なく委員長と副委員長はお互いに『パートナー』となってもらい、
  立食パーティー内での見回りを手伝って欲しいこと

3、この件について拒否権はあるが、できたら協力してほしいこと



ざっと言ってこんな感じだろうか。


ちなみに、『パートナー』というのは立食パーティー限定で組まれるペアのようなものだ。


あぶれる人が出てくる可能性もあるため、もちろん強制ではない。



『つまり、これだと七宝院はそこの西山とパートナーになれないという事なのだが……』


『別に問題ないですわよ?その仕事、私も手伝いますわ』



言葉の端を濁す菅原様に、私は躊躇なく頷いた。


『天シン』での敬太様は真凛ちゃんの『パートナー』になるはずだし、そうなれば私はフリーになる。


特に問題は無かった。


……というかむしろ、菅原様の話は正直とてもありがたかった。



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