青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。


「……そ。考え事」

「へえ。どんな?」

「…こんなことになるなんて、思ってなかったなぁとか」

「うん」

「……慎也はあたしとふたりで、つまんなくないかなぁ、とか」

最後の言葉は、しっかりと彼の目を見て言った。

慎也は静かに、「つまんなくないよ」と言った。


「…それ、麗奈の悪い癖だね。すぐ自分を卑下する」


…だって、自信がない。

あたしはあたしに、まだ自信を持てないから。

「…日本人だもん。ケンソンだよ、ケンソン」

「ハハ。麗奈、絶対『謙遜』って漢字で書けないでしょ」

いきなり言われて、ちょっと考える。

慎也の言う通り、なんとなくの形は思い浮かぶけど、細かいところは微妙だった。

「…なんでわかるの」

「麗奈、漢字苦手そう」

「なにそれっ」

苦手ですけどね!

つんとそっぽを向いたあたしに、慎也は「図星か」なんて笑う。

…その、優しい声が。


『麗奈』って呼ぶ度に、心臓が痛む。


「でさ、さっきも訊いたけど。なんか、食べる?」

立ち並ぶ屋台を見渡す慎也を見て、「そうだね」と返事をした。


< 178 / 380 >

この作品をシェア

pagetop