青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。
『んもう、慎也はなんにも言ってくれないんだもの。お母さん、利乃ちゃんみたいな娘が欲しかったわぁ』
そう言ってため息をつく、母親を上目に見つめる。
利乃が座る席は、本当はもう帰ってきていてもいいはずの人の、場所だ。
…相変わらず、俺の父親の帰りは遅かった。
今は笑っているけど、母さんがひとりで泣くのも、変わらない。
俺はやっぱり、何もできずにいる。
食卓の席が空いていることへの寂しさを紛らすためか、母さんは利乃をとても可愛がっていた。
『慎ちゃんのお母さんは、本当いい人だよね。わたし、大好き』
俺の部屋のベランダで、よく利乃と夜空を見上げた。
海の近くにあるこの家は、潮の匂いが空気にのってやってくる。
利乃は少しだけ焼けて茶色の混ざった髪を、さらりと揺らした。
『もーすぐ五年生だね、はやーい』
伸びをする利乃を見つめながら、『…うん』と返事をした。