青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。
『…利乃と会って、もう五年になるんだね』
なんともなしにそう言うと、利乃はきょとんと俺を見つめて、そしてへラリと笑った。
『ほんとだぁ』
……あれからやっぱり、利乃は笑い続けている。
大丈夫?と訊くと、最近楽しいからと言う。
確かに女の子達と、毎日楽しそうにおしゃべりしてるけど。
放課後の帰り道、彼女はふとしたときに目を伏せる。
例えば、親子連れとすれ違った時とか。
……車のない、自分の家のガレージを見た時とか。
『……利乃のお母さん、今日は帰ってくるの?』
星空を見上げる利乃に、そう尋ねてみる。
利乃はそのまま、『ううん』と返事をした。
『たぶん、帰ってこない』
…たぶん、か。
なんて、頼りない言葉なんだろうと思った。
『そっか』と返事をした俺に、利乃は『あのね』と静かに言った。
『…うちの親、離婚するかもしれない』
驚いて、目を見開く。
利乃を見ると、いつもと変わらない表情をしていた。
『……離婚、って…』
『最近ね、ときどきパパが帰ってくるの。それで、いっつも夜にママと喧嘩するんだ。大声でさ』
そういえば、と思い出した。
最近になって隣の家から聞こえてくる、大人の人の声。
あれは、利乃の両親が喧嘩をしている声だったんだ。