シェアハウスのミュージシャン
あー。楽しかった。
やっぱり昔から変わらない楽しさ!
それより、勢いで来たからなー。
早く戻らないと。
私はすぐさま、降り出口に向かおうとしたら、クイッと着ていた服を引っ張られた?
「ん?」
私はゆっくり後ろを振り返ると誰もいない…いやいる。
そこには、5歳ぐらいの可愛い女の子がいた。
「?どうしたの?」
「これ!」
私は女の子と同じぐらいに目線を合わせた。
小さい手のひらの上には私のピアスが置いてあった。
「あ!コレ!!」
「お姉ちゃん落としたよ?」
「本当に!ありがとうー!」
「かわいいね。」
「ありがとう!お母さんは?」
「ママはあそこ。」
指差した先にはベンチに座る若くて、優しそうなお母さんとお父さん。
「すいません。うちの子がご迷惑かけましたか?」
「いえ!!落としたピアスを届けてくれたんですよ。」
「あ!そうなんですか。
もー。この子本当にこういうの好きなんですよ。」
「ピアスですか?」
「そんな感じのをね。ずっと買って買ってって言われてるんだけど、こんなに小さいのに、耳なんか開けれないし、
そういうの分からなくて。」
「そーなんですか。」
「お姉ちゃん。見せて。」
「あ!うん。」
「すごいねー。キラキラ。重い?」
「ううん。重くないよ。」
「痛い?」
「ううん。痛くない。」
「いーなー。桃もやりたい。」
「すいません。この子ったら!」
「あの、もしよかったらコレどうぞ。」
「え?!」
私がバックから差し出したのは、ずっと前に買ったマグネットピアス。
耳を明けてから、鎖骨につけるように買った、ピンクのハート型のマグネットピアスだ。
「え?これは?」
「これは、マグネットピアスって言って、磁石なんで、耳に挟むだけで、ほら。」
私は、試しに桃ちゃんの耳に付けて鏡を貸した。
「凄い!ママ見て!夢ちゃんのより凄いよ!!」
「でも、こんなに高いもの。」
「いえ。これは拾ってもらったお礼です。ありがとうね。桃ちゃん。」
「うん!」
「あと、雑貨屋さんにマグネットピアスって言ったら、いっぱい置いてありますよ。桃ちゃんには早かもしれないけど、害はありませんし、お母さんにも付けれると思います。」
「…本当にありがとう。こんなに喜んで。ありがとうね。お名前聞いていいかな?」
「あ!私は沙織です!七瀬沙織。」
「私は、磯田秋とこっちが桃。
じゃ、沙織ちゃん。ありがとうね。」
「いえ。では失礼します。桃ちゃん。バイバイ」
「バイバイ。」