腕枕で朝寝坊
*年のはじめのご挨拶
お礼SS
~年のはじめのご挨拶~
※美織視点
※新婚編
※季節外れのお正月ネタ
紗和己さんの年賀状の準備は早い。
発売初日には予定数をどっさり買ってきて毎日コツコツ一月半掛けて書き上げていく。
と言うのも、紗和己さんは友人知人に宛てる年賀状を全て手書きしているからだ。
達筆な紗和己さんが丁寧に書いた年賀状は心が込もっていてとっても綺麗。
けど、彼は交友が広いのでその枚数もかなりのものになる。
毎日少しずつ丁寧に、コツコツ、コツコツ。
「大変じゃない?」
温かい緑茶を差し入れながら聞いた私に、紗和己さんはにっこり微笑んで
「ちっとも。すごく楽しい時間ですよ」
と答えた。
そして、湯気のたつお茶を啜りながら
「1年に1回大切なひと達を想いながら筆をとるこの時間が、僕にとってはすごく贅沢で幸せな時間なんです」
ほっこりとした笑顔を浮かべて、そう教えてくれた。
ああ、紗和己さんって本当に素敵な人だな。
誠実な彼の人柄を表すその言葉に、私はひそかに惚れ直したのであった。
そして、元旦。
真心を込めて年賀状を送った紗和己さんには、同じように友人知人から心の込もった年賀状がたっくさん届く。
それを一枚一枚嬉しそうに眺める紗和己さん。
こたつで隣り合う私に
「彼は大学時代の友人で最近結婚したばかりなんですよ。こっちは店を立ち上げるときお世話になった方で……」
そう紹介して温かい気持ちを共有してくれるのが、嬉しい。
なんだかぽかぽかした気分になりながら年賀状を眺めていると、私宛てのものに見慣れた達筆の文面を見付けた。
それは。
『水嶋美織 様
昨年は大変お世話になりました。
昨年は貴女と新しい絆を結び、僕にとって幸せに満ちた年でありました。
まだ夫として新米で至らない所もあるかと思いますが、一緒に生涯の伴侶として成長していけたらと思います。
今年もたくさんの悦びと思い出を作っていきましょう。どうぞ宜しくお願い致します。
貴女にとって幸せな一年となりますように。
水嶋紗和己』
驚いて顔を上げた私に、紗和己さんが目を細めて微笑みかける。
「その年賀状を書いてる時が一番幸せでした」
年明け早々、溢れそうなほどの愛を貰ってしまった私は嬉しくてどうしていいか分からなくて。
言葉にならなくて、隣に座る紗和己さんにぎゅうぎゅう抱きつきながら
私も来年は紗和己さんに年賀状を書こう。とびっきり心を込めて。
と、強く思った。
「紗和己さん、好き。今年もいっぱいふたりで恋しようね」
広い胸に抱かれくぐもるように言った私に、紗和己さんは髪を撫でながら
「もちろんです。今年も宜しくお願いします」
と優しく応えた。
~年のはじめのご挨拶・完~