腕枕で朝寝坊
*お礼SSまとめ*家族編

*たとえ親バカと言われても




お礼SS
~例え親バカと言われても~



家族編
美織視点
花海5歳 光月3歳




紗和己さんは親バカだ。


「ただいまー。花ちゃんと月ちゃんにお土産を買ってきましたよ」

ある日、取引先との打ち合わせから戻ってきた紗和己さんはふたつの大きな紙袋を持って帰ってきた。

「新しい取引先で作ってる製品なんですけど、すごく可愛かったんで。手作りの一点モノなんですよ」

そう言って嬉しそうに紙袋から取り出したのは子供サイズのブーツ。カーキ色の革製品で、同じく革のリボンベルトのモチーフが愛らしい。

「わあ、可愛い」

「でしょう?花ちゃんと月ちゃん、サイズ違いでお揃いですよ。きっとペアで履いたらすごく可愛いでしょうね」

娘たちのその姿を想像して、とろけるような目をする紗和己さん。けど。

「オイル仕上げで使い込んだような色合いがすばらしいでしょう。カントリーな洋服とあわせてあげたいですね」

「…オイル仕上げ……って、これまさか本牛革?」

手にした小さなブーツ。その見事な風合いにもしやと思ってはいたけど。

「ええ。牛革製品を専門に扱う工房なんです」

「……紗和己さん。これ…いくら?」

静かに聞いた私の質問の後に訪れたのは回答ではなく沈黙だった。

「………えーと…。美織さん、僕、この冬買うつもりだったコートやめようと思うんです」

「……いくら?」

「いや、その。コート代よりかはずっと安いですし。僕のお小遣いからですし…」

「い・く・ら?」

紗和己さんが大きな身体をしょんぼり縮こませてバツが悪そうに言ったその数字に、私は軽く目眩を覚えた。

「贅沢!贅沢過ぎ!!子供なんてすぐ大きくなっちゃうのに、そ、そんな高級品贅沢過ぎます!」

「いやいや、子供のうちから本当に良い物に馴染ませておかないと」

「限度があるでしょ!子供のブーツなんて数ヵ月しか履けないのに…ああ勿体ない…」


もともと物にはこだわりを持っていた紗和己さん。そこに親バカが加わるととんでもない事態になる。

「僕は雑貨屋のオーナーとして娘に本当に良いモノを教える義務が!」

私に叱られてそう反論した紗和己さんだったけど。


翌朝、玄関に置かれたブーツを見た光月の

「月はプ○キュアの長靴が欲しかったなー」

という一言に盛大にショックを受けていたときには、さすがに可哀想に思えた。


もっとも、それに懲りず3ヶ月後には娘たちにお高価いシフォンワンピースを買ってきた紗和己さんだったけど。

自分のお小遣いを犠牲にして、彼の親バカ道は続いていくのだった。


~例え親バカと言われても~完
 
 
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