腕枕で朝寝坊

*愛しい娘のワガママと言えど




お礼SS
~愛しい娘のワガママと言えど~



家族編
美織視点



「父親は娘が何歳くらいまで一緒にお風呂に入っていいんですかね…」


花海5歳、光月3歳、可愛い盛りの娘を持つ紗和己さんの最近の悩みはもっぱらこれだ。

娘たちに背中を流してもらうと1日の疲れが吹き飛ぶ、と蕩けそうな笑顔でよく言ってる紗和己さんにとっては本気で死活問題なんだろう。


「私は小学校あがるまでだったなあ。小学生になってからは一人で入ってたし」

私の経験をふまえて答えると、紗和己さんは

「そうですか…じゃあもうそろそろ花ちゃんとは入れなくなりますね…」

と、広い肩をしょんぼりさせた。

「花ちゃんはそろそろだけど、月ちゃんはまだ2年もあるじゃない」

「そうですね。月ちゃんとはまだしばらく入れますね」

私の慰めに、顔を明るくしてそう言った紗和己さんだったけど。


ある日の夜。

早く帰宅した紗和己さんが光月と一緒にお風呂に入っていた時のこと。

突然お風呂場からジャバジャバと激しい水音と共に


「月ちゃん!コラ!光月!!それはダメ!!これは交換なんか出来ませんって!!ぅわああああああ」


という紗和己さんの悲痛な叫びが聞こえてきた。

そして。


「…………やっぱり男親は、娘とお風呂に入るべきじゃないと思います………」


お風呂から出た紗和己さんはドンヨリと落ち込んだ様子でそう言った。


何があったのか聞こうとした私だったけど、そういえば今日、幼稚園から帰ってきた光月が

『あのねえ、男子が月のこと女だからって仮面ライダーごっこに入れてくれないんだよ!あーあ、月、男の子になりたい!』

と言っていたのを思い出して、口をつぐんだ。

…………光月。それは幾ら優しいパパでもあげられないって云うか、交換出来ないって云うか。


お風呂場でいったいどんな何の奪い合いがあったのか。


光月は『パパのケチ!』と怒っていたけど、紗和己さんはそれからしばらく本気で落ち込んでいた。



~愛しい娘のワガママと言えど・完~
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