恋の糸がほどける前に

「な……っ!な、なん」


「なんでって、純希の部屋にいたから、お前の友達が叫んだの普通に聞こえてたし」


純希(じゅんき)、ていうのは私のお兄ちゃんなんだけど。

……お兄ちゃんの部屋は、ばっちり私の部屋のお隣だ。

芽美、そういえば私が好きな人できたって打ち明けたとき叫んでたよね……。


そりゃ、聞こえるって……。


「……え、じゃあもしかしてお兄ちゃんにも聞かれてるの!?」

身内に聞かれるのが一番恥ずかしいんだけど!!

そう思って勢いよく訊けば、「当たり前だろ」とさらりと返され、がっくりとうなだれるしかなかった。

……うう。

恥ずかしい。

次からお兄ちゃんとどんな顔して会えばいいの。


「死にたい……」

「純希の方は、安心、ってか感動してたけど?やっと葉純にもそういう感情が生まれたのかって」

「……優しい兄だわー」


そんな感動、本気でいらないからお願いだから忘れて欲しい、なんていう心の声が切実すぎたからかな。

私の口から出てきたのはやけに棒読みの言葉だった。

いや、うん、優しいとは思ってるよ、お兄ちゃん。

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